2013年 9月

 冷たい密室と博士たち / magicien 

冷たい密室と博士たち (講談社文庫) 今年23冊目。森博嗣さんの「冷たい密室と博士たち」を読んだ。

すべてがFになる」の続編、S&Mシリーズの2作目。
インパクト重視で、本来4作目の予定だった「すべてがFになる」を1作目とした、というエピソードを知っていたため、今回の作品はインパクトが少ないのだろう、と思っていたら全くそんなことはありませんでした。
犯行のトリックや手口、犯人は読み進めるほどに分からなくなり、お手上げ状態で解決編まで読んでしまいました。クライマックスでtelnet、who、talkというコマンドを実行する場面があったりして、あぁこれは理系のための小説だなぁと改めて思いました。
あとがきの解説を見るに、当時は「この作者は人間を描いていない」という評価もあったようなのですが、自分が理系だからなのか、フィクションやファンタジーに慣れすぎてしまったのか、登場人物たちの心情や挙動に全く違和感を覚えませんでした。
S&Mシリーズは全部で10冊のようなので、年間目標達成のためにシリーズをまとめて読むのもありかなぁと思っています。

追記:作中にカルピスをコーラで割ったキューピットという飲み物が出てきます。さっき試しにコーラとカルピスウォーターを1:1で混ぜて飲んでみましたが、すごく薬品っぽい味になりました。が、意外といけました。
カクレカラクリというコーラだらけの作品もありましたが、森さんはコーラ好きなんでしょうか。

2013/09/29(Sun) 23:20:21

 ドグラ・マグラ / magicien 

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫) 今年22冊目。夢野久作さんの「ドグラ・マグラ」を読んだ。

今年50冊の読書目標のうち、課題図書として予め考えていた一冊です。
以前、青空文庫で読んでみようとしたものの、「キチガイ地獄外道祭文」に入ったところで完膚なきまでに心をへし折られて読むのを諦めた経緯があり、今回は本を買って一気に読むという作戦で無事に最後までたどり着くことができました。
私が買った本は上下巻に分かれており、上巻の脈絡の無さと読み辛さは三大奇書と呼ぶにふさわしいものでしたが、下巻に入ってみると、上巻の各章にもそれぞれ意味があり辻褄が合うものだということが分かってきます。そういう意味で、ドグラ・マグラが探偵小説に分類されているのだと無理矢理納得することにしました。
物語ははっきりとした結論が出ないまま終わってしまい、誰を信じるかによって、いろいろな解釈が出来る作品ですが、個人的には主人公の解釈がほぼ正しいものであり、最終的にはハッピーエンドを迎えることになる、といいなぁと思っています。
主人公の記憶と精神が不確かな状態で、何が真実かを探っていくという点では、FFXにも通じるところがあるかと一瞬考えましたが、おそらく気のせいでしょう。
無意識や夢の描写を見るにフロイトに影響を受けていそうな印象でした。私自身がフロイトをよく知らないので、なんともですが...
2013/09/29(Sun) 22:49:51

 四畳半王国見聞録 / magicien 

四畳半王国見聞録 (新潮文庫) 今年21冊目。森見登美彦さんの「四畳半王国見聞録」を読んだ。
絶賛森見祭開催中です。タイトルから分かる通り、四畳半神話大系とつながりのある作品で、樋口師匠が活躍したりしなかったり。有頂天家族にも出て来た淀川教授も登場したり。どうしようもないほどリアルで残念な大学生活を描写すると見せかけて、とんでもないファンタジーだったりと、森見ファンの方なら安心して読んで頂けるかと思います。

登場人物たちがことごとく量子力学を目の敵にしていますが、必須科目なのでしょうか。
樋口師匠に比肩する能力者たちが活躍する「大日本凡人會」がおすすめ。

2013/09/02(Mon) 02:47:23

 宵山万華鏡 / magicien 

宵山万華鏡 (集英社文庫) 今年20冊目。森見登美彦さんの「宵山万華鏡」を読んだ。

これも森見さんファンの一人である友人に夏に読むなら、ということで薦められた本。 祇園祭の宵山を舞台にした短編集。6つの短編からなっており、それぞれ主人公は別々ですが、登場人物同士が出会ったり、すれちがったりして物語に絡んできます。
同一人物のようでいて、別の人物のような人たちが出て来たり、コメディだったりホラーだったりファンタジーだったり。万華鏡という名前がぴったりの作品だと思います。ナミヤ雑貨店の奇蹟でも同じようなことを書きましたが、同じ時間、同じ場所での出来事を複数の視点から描写することで、真実が明らかになっていくようなパターンは個人的に大好物です。ただし、今回は読めば読むほど深みにはまっていきそうです。

2013/09/02(Mon) 01:59:04

 新釈 走れメロス 他四篇 / magicien 

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1) 今年19冊目。森見登美彦さんの「新釈 走れメロス 他四篇」を読んだ。

森見さんファンの一人である友人に薦められて読んでみました。
タイトルにある「走れメロス」のほか、「山月記」「薮の中」「桜の森の満開の下」「百物語」について、ストーリーの骨子はそのまま、舞台を現代の京都に作り替えた短編集。おそらく原作を知らなくても十分楽しめますが、作品の趣旨からしても原作を先に読んでおいた方が良さそう。
原作の面白みを残しつつも、うだつが上がらない大学生たちが森見ワールドを作り上げています。 巻頭に「走れメロス逃走図」なるものが付いていて、走れメロス編の主人公芽野史郎が京都の街をどのように駆け回ったが分かるようになっています。メロスって逃げる話だったっけ...
四畳半神話大系ともリンクがありそう。発行順に読むのであれば、四畳半神話大系→新釈走れメロス→四畳半王国見聞録という順番になるので、未読の方は、四畳半神話大系から読むとより楽しめるかもしれません。

2013/09/02(Mon) 00:18:56