ペンギン・ハイウェイ / magicien 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫) 今年8冊目。森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」を読んだ。

森見成分が不足してきたので、先週末にふらふらと本屋に行って買ってきました。
最近読書のペースが落ちているのは、家に読む本が無いのが一因だろうということで、いつか読もうと思っていた本や目についた本を買いあさって、気づけば2万円の出費になりました。

主人公は小学四年生のアオヤマ君。ある日、空き地にペンギンたちが突如として現れ、その謎を解明しようと街を探検する、という話。思いのほかファンタジーでした。
相変わらずセンスの溢れた文章で、「ぼくはいつかサバンナも探検に行くだろう。草原をかけまわる本物のシマウマを見たら、どんなものだろう。おそらく目がちらちらすると思う。」など、どうすればこんな文章が書けるようになるのか、途方に暮れるばかりです。
よくよく見ると、日本SF大賞受賞作品ということで、ファンタジーのようで実はとても科学的な描写が出てきます。

少し脱線しますが、私は大学で量子力学について少しだけ触れる機会があって、多世界解釈というものがあることを知りました。量子にはAという状態とBという状態が重ね合わさっている状態があり、その量子を観測することによってAかBどちらかの状態に収束する。その収束の瞬間、Aという観測結果を得る世界とBという観測結果を得る世界に分裂する、というもの。
その話を聞いたとき、今まで下手したら死んでた、と言われるようなことが何度かあったものの無事に生きているのは、自分が死なない世界が自動的に選択されているからではないか。このまま自分が死なない世界が選択され続けることによって、自分は永遠に生き続けることになるのではないか、とふと考えたりしたのですが、それと同じことをアオヤマ君の友達のウチダ君が言っていて、この小学生たちは何者なんだ...と思いました。

さよならドビュッシーがそうであったように、こちらもSF大賞という割にはサイエンスよりもファンタジーが主役という感じで、趣旨とは少し軸をずらしたものが大賞に選ばれる傾向があるのかもしれません。
それにしても、アオヤマ君のあまりの純粋さ、健気さに最後はじんわり来てしまいました。

2013/04/23(Tue) 02:47:05