夜中に犬に起こった奇妙な事件・感想編 / ノリオ 

夜中に犬に起こった奇妙な事件 『夜中に犬に起こった奇妙な事件』をやっと読み終わったー。今年初めて読みきった小説ってわけですな。
前にも書いたけど簡単にあらすじを説明すると、自閉症だけど頭が良い少年が、犬が殺された事件を解決しようとする話。その少年が、身の回りに起こった出来事をミステリ小説として書いた本という形式をとっている。

まずこの小説を読もうとすると、読者が必ず不審に思う点は、章番号が2から始まっていることだろう。僕は落丁か何かあったのではないかと、前のページに戻って確かめたりしちゃいましたよ。
ちなみに読み進めていくと、2章の次が3章で、さらにその次が5章。勘のいい人は何か気付いたかもしれない。

初めはミステリ小説として進んでいくけれど、途中から思いもよらない展開に。なるほどこういう小説だったのかという、感想ともいえないような感想ですみません。

この小説の面白い点というか特異な点は、やはり自閉症の少年を主人公に据えているところだろう。他人の感情が理解できず、独自の思考回路で行動する少年が、冒険を通じて成長していく様が描かれている。

また、話の合間に本筋とは関係ない、数学の問題が出てくるのも面白いところ。例を挙げると・・・
伏せられたカード3枚の中に1枚だけ正解のカードがある。あなたはまず3枚の中から1枚を選ぶが、それが正解かどうかまだ調べることはできない。次に、答えを知っているディーラーが、選ばれなかった2枚の中からハズレのカードを1枚めくってみせる。それからディーラーは、あなたが最初に選んだカードが正解かどうか確かめる前に、1度だけ考えを変え、残りの1枚を選んでもよいと言う。あなたはどうするべきか?(本文を要約したものです)

この問題は、先日の平成教育委員会でもやっていた気がする。読んでいて、「2枚のうちどちらかが正解なんだから、どっちを選んでも当たる確率は2分の1だろう」と考えていたのですが・・・

また、この本を読んでいて感じたのが、翻訳された海外小説において、翻訳者が与える影響は思いのほか大きいということだ。
僕が読んだ本では、原作者の意図を反映しているのかわからないけれど、地の文が敬語だったりそうでなかったりと、言ってしまえば綺麗でない文章で書かれている。そこがまた、「著者」の少年のノーマルでないかんじを演出していて良いんだけど、そういった工夫は翻訳者の手に委ねられているわけである。
新聞や論文と違って、理論的に内容が正しければいいってわけじゃないし、訳者によって大きく雰囲気が変わってしまうこともあるだろう。奥が深いと感じました。
ちなみに原作者はマーク・ハッドン、翻訳者は小尾芙佐さんという人でした。
2010/01/18(Mon) 00:21:55