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BSDライセンス解説vol.2.5―BSDライセンスシリーズ一覧― / マルパチ
BSDライセンスにはいくつかのバリエーションがあります。しかもやっかいなことにそれぞれが複数の通称を持っているのです。以前の記事では一番オーソドックスな3条項BSDライセンスについて解説しましたが、2条項BSDライセンスが適用されるソフトウェアも多いですし、古い4条項BSDライセンスが適用されるソフトウェアもないとも限りません。これらを見誤ると法的に面倒なことになりかねません。
そこでBSDライセンスの種類ごとに、その通称をまとめてみたいと思います。
・3条項BSDライセンス
3条項BSDライセンス(3-clause BSD license) = 修正BSDライセンス(modified BSD license/new BSD license)
・2条項BSDライセンス
2条項BSDライセンス(2-clause BSD license) = FreeBSDライセンス(FreeBSD license)
・4条項BSDライセンス
4条項BSDライセンス(4-clause BSD license) = オリジナルBSDライセンス(original BSD license) = 旧BSDライセンス(old BSD license)
こうして見るとバリエーション自体は3つしかないくせに名前だけはやたらたくさんあることがわかります。
個人的には旧BSDライセンス(old BSD license)とかnew BSD licenseといった名前は悪い名前だと思います。BSDライセンスは作成者であるカリフォルニア大学バークレー校自身が3つもバリエーションを出していますし、第三者がBSDライセンスを真似してMITライセンス等の数多くの亜種が生み出されています。古い新しいといった相対的な言葉で区別しようとすると誤解を招きかねないと思うのです。
BSDライセンスはGPLと比べると簡便でわかりやすいライセンスです。しかしGPLと異なり作成された過程も、作成に関わったメンバーも不明確なライセンスです。また簡便すぎてかゆいところに手が届かないといった問題もあります。
どちらのライセンスが良いかというのは一概に言い切れないのですが、お手軽さやカスタマイズのしやすさを優先したいならBSDライセンス、信頼性や堅牢性を優先したいならGPLといったところでしょうか。
この記事のURL: https://darkhorse2.0spec.jp/83/
2010/01/25(Mon) 13:41:00
BSDライセンス解説vol.2―MITライセンス― / マルパチ
jQueryをいじろうとしてjQueryがMITライセンスであることに気づく。だからMITライセンスについて勉強がてら解説を書いてみることにします。前回予告した「古いバージョンのGPL」に関する記事は延期です(笑)さてMITライセンスはBSDライセンスの亜種なわけですが、どのようなライセンスなのでしょう。
まずMITライセンスの本文を読んでみる。さすがBSDライセンスの亜種なだけあって短い。とにかく短い。
短いので主要部分の翻訳が出来そうな気になってきます。そんなわけで以下はMITライセンスの翻訳です。
<著作権告知省略>
本ライセンスによって、無償で、「このソフトウェアのコピー及び付属の文書ファイル(以下「ソフトウェア」とする)」を取得した全ての者に対し、ソフトウェアを無制限で取り扱う許諾が与えられる。この許諾には使用、コピー、改変、結合、公表、配布、再実施(sublicense)、ソフトウェアのコピーの販売のいくつか又は一つに対する無制限が含まれる。そしてソフトウェアを提供された者に同じ許諾をすることも許諾される。但し以下の条件に従うこと。
上記の著作権告知及び本許諾書は全てのソフトウェアのコピー又は実質的な一部に組み込まれなければならない。
<免責条項省略>
うーん。MITライセンスはBSDライセンスとほぼ同じ法的内容を持ったライセンスのようだ。違うところは言い回しくらいか。
あまりに違いがなさ過ぎて逆に不安になったので違いを探してみた。しかし違いはないということで正しいみたいだ。GNUプロジェクトも「3条項BSDライセンス(Modified BSD lisence)とMITライセンス(X11 lisence)はおおよそ同意義である」と言っている。→リンク先ページの"Modified BSD lisence"の項を参照
そんなわけで3条項BSDライセンスとMITライセンスに法的な違いは無いということで解説を締めくくりたいと思います。…つまらない結論だなぁ。
つまらないので一つだけ補足します。
MITライセンスはGPLと2本立てで用いることができます。3条項BSDライセンスについても同様にGPLと2本立てで用いることができます。→参考リンク
このように1つのソフトウェアを2つ以上のライセンスで配布することをデュアルライセンスといいます。jQueryはGPLとMITライセンスのデュアルライセンスですね。
それでは!
この記事のURL: https://darkhorse2.0spec.jp/80/
2010/01/19(Tue) 19:28:02
BSDライセンス解説vol.1―BSDライセンスってなに?― / マルパチ
さて今回はBSD(=Berkeley Software Distribution)ライセンスについて書きたいと思います。BSDライセンスはいろいろな亜種があるのですがオーソドックスな3条項BSDライセンス/3-clause BSD license(=修正BSDライセンス/modified BSD license)を題材に書いていきますね。(リンク先の文書には4つの条項がありますが第3条が削除されたので3条項になります。)
BSDライセンスは、今まで説明してきたGPL(=General Public License)と同じく、ライセンスされたソフトウェアがフリーソフトウェアであると述べています。しかしBSDライセンスの記述はGPLの記述に比べるとずいぶんあっさりしています。
どのくらいあっさりしているのかわかりやすくするためにBSDライセンスが要求する利用・再配布・改変の条件を書き出してみたいと思います。
<著作権告知省略>
改変のあるなしにかかわらず、以下の条件を満たす限り、ソースコード形式及びバイナリ形式での利用及び再配布が許諾される。
1.ソースコードの再配布の際には、上記の著作権告知、ここに列挙された条件、そして下記の免責条項を保持しなければならない。
2.バイナリ形式での再配布の際には、上記の著作権告知、ここに列挙された条件、そして下記の免責条項をコピーした文書その他の資料と一緒に再配布しなければならない。
4.大学の名前(カリフォルニア大学バークレー校)もコントリビューターの名前も、このソフトウェアから派生する製品の推奨・販促に使ってはならない。但し書面による事前の明示的な許諾がある場合を除く。
<免責条項省略>
以上です。あれこれ要求するGPLに比べるとずいぶんあっさりしているでしょう?
しかもGPLと違い、改変されたフリーソフトウェアを再配布する際に「改変されたソフトウェアの全体に丸ごとこのライセンスを適用させること(GPLv3第5条1パラグラフc項)」が要求されていません。→前回記事の条件⑤を参照
これはどういうことかというと、改変したソフトウェアを再配布するときにソースコードを公開する必要がないということです。(つまりBSDライセンスソフトウェアはフリーソフトウェアではあるけれどもコピーレフトではないのですね。)
そんなわけで今回はあっさりとした記事にすることができました。毎回こんな感じだと読みやすくて良いのでしょうけど…。
次回は「古いバージョンのGPL」について書きたいと思います。それでは!
この記事のURL: https://darkhorse2.0spec.jp/77/
2010/01/16(Sat) 16:40:07