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GPL解説vol.8―定義集― / マルパチ
前回の記事にプロパゲート(propagate)という謎の言葉が飛び出してきました。またGPLv3第11条3パラグラフを読んでみた人はコントリビューター(contributor)や必須特許クレーム(essential patent claims)といったわけのわからない用語に悩まされたかも知れません。今回はそういった用語の「定義」に関する記事です。
法典(会社法など)や法律文書(ライセンスなど)には一定のフレーズが繰り返し記述されることがあります。しかし同じ文書の中にいちいち同じフレーズを繰り返して書くのはかったるいです。
そこで法律家は定義規定を設けて記述の繰り返しを避けるのです。使い方としてはプログラマーが関数の定義をするようなものだとイメージしていただければ結構です。
法律文書を読んでいて訳のわからない用語が出てきたときは、まず定義規定の存在を疑ってください。定義規定は文書・条項の最初の方に記述するのが暗黙の了解になっています。
上記の「プロパゲート(propagate)」や「必須特許クレーム(essential patent claims)」もGPL(General Public License)の中に定義規定があります。これらの用語はGPLのあちらこちらに顔を見せます。特に「プロパゲート(propagate)」や「コンベイ(conbey)」は頻出です。
どうせいずれ解説することになるでしょうから、この機会に翻訳して簡単な説明もしてしまうことにしました。その都度リンクを貼るので今は無理に読まなくてもかまいません。
「改変(modify)」→GPLv3第0条4パラグラフ
著作物を「改変する」とは、著作物の全体又は一部の複製又は翻案を著作権許諾を必要とする方法ですることを意味する。但し正確な複製を作成することを除く。結果として生じた著作物は先行著作物の「改変されたバージョン(modified version)」、又は、先行著作物に「基づく(based on)」著作物と呼ばれる。
※わかりづらい書き方ですが要は、一部の複製、全体の翻案、一部の翻案の3つが「改変(modify)」である、と言っているのです。全体の複製は「改変」ではなく「プロパゲート」になります。そして「改変されたバージョン(modified version)」と「基づく(based on)」という言葉にも「改変」と同様の意味があると言っています。
「プロパゲート(propagate)」→GPLv3第0条6パラグラフ
著作物を「プロパゲートする」とは、許可を得ずにすることによって、準拠する著作権法に基づく侵害行為による法的責任を直接的又は間接的に発生させる行為を意味する。但し、コンピュータ上での実行、又は、私的複製の改変をのぞく。プロパゲートは複製、配布(改変の有無を問わない)、そして一般公開を含む。さらにある国では他の行為もプロパゲートに含まれる。
※「準拠する著作権法」というのがわからないかと思われます。これはどういう訳かというとつまり、著作権法というのは国や州の数だけあるわけであります。ですからその時その時で適用される著作権法を参照してください、という意味です。GPLはどこの国の人に使われるかわかりませんからね。ちなみにどの著作権法が適用されるのかというのは国際私法の問題であり、本稿では解説しません。
「コンベイ(convey)」→GPLv3第0条7パラグラフ
著作物を「コンベイする」とは、プロパゲートの内、相手方に複製の作成又は受領を可能にさせるものを意味する。コンピューターネットワークを介したほんの意思疎通に過ぎず、複製の受け渡しを伴わない場合は、コンベイではない。
「コントリビューター(contributor)」→GPLv3第11条1パラグラフ
「コントリビューター」は著作権保持者でありこのライセンス(GPL)に基づきプログラム又はプログラムに「基づく(based on)」著作物の使用を許可する者である。このように使用を許可された著作物をコントリビューターの「コントリビューターバージョン(contributor version)」という。
「必須特許クレーム(essential patent claims)」→GPLv3第11条2パラグラフ
コントリビューターの「必須特許クレーム」とは、コントリビューターによって保有又は支配(control)される全ての特許クレームであり、このライセンス(GPL)で許諾されている行為(コントリビューターバージョンの作成・使用・販売)により侵害されうるものである。既に取得されているか以後取得されるかを問わない。但し、コントリビューターバージョンのさらなる改変の結果としてのみ侵害されうるクレームは含まない。この定義において、「支配(control)」にはこのライセンスの要件に合致した方法で特許再実施権を付与する権利を含む。
※いきなり「特許クレーム」とかいわれても困るでしょうが、とりあえず今は特許権のことなんだと思って読んでください。真面目に説明しようとすると特許法の話をだらだらとしなければならなくなるので。
予想以上のボリュームになってしまいました。今回の記事は、いま無理に理解しようとしなくても、今後の記事で用語が出てきたときに読み返せばオッケーです。
次回の記事はちょっと間があいて2月11日になりそうです。
それでは!
この記事のURL: https://darkhorse2.0spec.jp/86/
2010/02/02(Tue) 18:52:28